部活が学校から地域へ。指導者や子供たちの環境はどう変わる?

育成

コーチとして「部活のこれから」を考えます

「中学校の部活を学校の先生ではなく、地域のクラブや団体にお願いする」

最近ニュースでよく聞く「部活動の地域移行」ですが、これって結局どういうことなのでしょうか?

私はこれまでバスケのコーチを仕事にしてきましたが、指導者の視点から見ると、楽しみな部分と「これだと続かないかも」という心配な部分の両方があります。

難しい制度の話は抜きにして、「子供たちのスポーツ環境はどうなるの?」「教える人はどうなるの?」というポイントをわかりやすく整理してみます。

国も本気で予算を増やしています

ニュースによると、国(政府)は2026年度から、部活の地域移行にもっと力を入れるために予算を倍増させる予定です(実質139億円規模)。(埼玉新聞)

これまで「休日の部活」から少しずつ進めていましたが、これからは「平日の部活」も含めて、学校から地域へバトンタッチしていく動きが加速しそうです。(文部科学省)

なぜ「地域移行」をするの?

理由は大きく3つあります。

  • 👩‍🏫 先生が忙しすぎるから:授業や行事に集中できるように、部活の負担を減らすため
  • 👥 子供が減っているから:学校単位だと人数が足りず、チームが組めない部活が出てきているため
  • 🎽 スポーツを続ける場所を守るため:学校に部活がなくなっても、地域で続けられるようにするため

つまり、「子供たちがスポーツを楽しめる環境を、無理なく未来に残すため」の改革なんです。(文部科学省)

指導者にとってはチャンス?それともピンチ?

「地域で教える場所が増えるなら、コーチにとっては嬉しいことでは?」と思いますよね。確かにチャンスは増えます。

でも、それを「仕事(本業)」として続けていくのは、今のままだと結構ハードルが高いんです。

1) お給料だけで生活するのは大変

部活の指導の報酬は、時給で払われることもあれば、業務委託でまとめて払われることもあります。ただ多くの場合は「働いた時間=お金」になるので、時間を増やさないと収入が増えません

そのため、生活できるだけの収入を部活指導だけで得るのは難しい、というのが現実です。

2) 「教える時間以外」の作業が多い

練習メニューを考えたり、会場を予約したり、怪我の対応をしたり…。指導以外にもやることは山積みですが、そこにお金が出ないこともよくあります。

3) 時間が偏っている

平日の夕方や土日がメインになるので、他の仕事との掛け持ちが難しく、「これ一本で食べていく」のが難しいスケジュールになりがちです。

このままだと、「先生の負担が、地域の人(コーチ)に移っただけ」になってしまう心配があります。

これからの予想:「プロのコーチ」よりも「地域の人」が中心に?

国の資料などを見ていると、すべての部活をプロのコーチに任せるというよりは、「地域に住んでいるスポーツ経験者や、協力してくれる人(地域人材)」をたくさん集めて、みんなで支えようという方向性のようです。(文部科学省)

たくさんの人が関わってくれるのは良いことですが、プロとして教えてきた人にとっては、「専門職としての価値」が薄まってしまう(ボランティアに近い扱いになってしまう)可能性があります。

プロのコーチはどうすればいい?:「教える」以外の役割へ

では、プロのコーチはもういらないのでしょうか? 私はそうは思いません。

これからは、子供たちに直接教えるだけでなく、「支える側」に回る役割が重要になってくるはずです。

  • 🧩 新しいコーチを育てる(地域のお父さんコーチなどに教え方を教える)
  • 🛡️ 安全を守る(怪我の予防や、事故が起きないようなルール作り)
  • 🤝 調整役になる(学校や自治体、クラブチームの間に入って話を進める)

「みんなで支える」からこそ、全体を見て安全や質を管理するプロが絶対に必要になります。(文部科学省)

これだけは整えてほしい! 現場からの3つの願い

指導者が安心して子供たちに向き合うために、これだけは必要だと思う条件です。

① 「教えるだけ」を仕事にしない

指導だけでなく、クラブの運営やコーチの育成なども含めて、ちゃんとした「職業」としての枠組みを作ること。

② 安定した収入の仕組みを作

「教えた時間分だけ」ではなく、毎月決まった額(固定給)がある程度保証される形にすること。

③ 準備や移動の時間も評価する

見えない努力や時間にも、しっかり対価が支払われるルールにすること。

失敗しないために気をつけること

しっかりした仕組みがないままスタートすると、こんなことが起きがちです。

  • 🔁 コーチがコロコロ変わる(条件が悪くて続けられない)
  • 💸 参加費が高くなる(各家庭の負担が増え、習える子と習えない子の差が出る)
  • 🧯 トラブルの対応が曖昧(怪我をした時、誰が責任を持つのか決まっていない)

保護者の皆さんにチェックしてほしいこと

もしお子さんが地域のクラブに入ることになったら、ぜひここを見てみてください。

  • 保護者の方:月謝の内訳(指導料?保険料?)や、コーチがどんな研修を受けているか
  • 運営する方:コーチに無理な負担がかかっていないか、事故の時の責任はどうなっているか

「地域移行=なんとなく良いこと」で終わらせず、「安心して預けられる環境か?」「コーチが無理なく続けられるか?」という視点を持つことが、結果的に子供たちのスポーツ環境を守ることにつながります。

まとめ

部活動の地域移行は、子供たちのスポーツ環境を未来に残すための大切な変化です。

成功させるためには、制度を整えることと同じくらい、現場の指導者が無理なく続けられる環境作りと、保護者や地域の方々の理解が欠かせません。

「大人の事情」で終わらせるのではなく、主役である子供たちが安心してスポーツに打ち込めるよう、私たち大人もそれぞれの立場で「良い環境」について考えていく必要がありそうです。

参考

【独自】部活動の改革予算、実質2倍超 26年度当初と25年度補正(共同通信) – Yahoo!ニュース  政府は2026年度予算案で、公立中学校の部活動を民間団体などに委ねる地域展開(地域移行)に57億円を計上する方向で最終調 news.yahoo.co.jp