Bリーグ島根36億円で体育館改修|Bプレミア参入の資金調達を解説

アリーナ

島根スサノオマジック、Bプレミア参入で36億円のアリーナ改修を決定

プロバスケB1の島根スサノオマジックが、2026-27シーズンから始まる新しい最上位リーグ「Bプレミア」への参入を決めています。素晴らしいニュースですよね。

ただ、このニュースの裏側には、36億円規模という大がかりなアリーナ改修プロジェクトが動いていました。松江市総合体育館を5000席以上の施設に生まれ変わらせるため、松江市が17社から33億円超を集めたというのです。

今回このニュースを見て、「36億円ってどうやって集めるの?」「なぜそんなにお金がかかるの?」と疑問に思い、調べてみました。

この事例を通じて、プロスポーツチームが直面する設備投資の現実と、その資金調達の仕組みを見ていきたいと思います。

Bプレミア参入基準とは?アリーナ5000席以上が必須条件

プロスポーツリーグが求める施設要件の実態

まず、なぜ36億円もの改修が必要だったのか。それはBプレミアの参入基準にあります。Bプレミアへの参入には、以下の条件をクリアする必要があります:

経営面の条件

  • 年間売上12億円以上 → 島根スサノオマジックはクリア済み
  • 平均入場者数4000人以上 → こちらもクリア済み

施設面の条件

  • 5000席以上を収容できるアリーナ → これが課題だった

島根スサノオマジックは強いチームです。2021-22シーズン、2022-23シーズン、2024-25シーズンと3回もチャンピオンシップに進出しています。経営面の数字も申し分ない。でも、それだけでは新リーグに参入できない。「施設」という基準が立ちはだかっていたんですね。

これはBリーグだけの話ではありません。欧州サッカーの上位リーグには厳しいスタジアム基準がありますし、日本のJリーグにも施設要件があります。プロスポーツは今、エンタメとして競技を見せることが求められる時代です。

強いチームを作るだけでは足りない。それを「観せる場所」も一流でなければならない。これがプロスポーツビジネスの現実なのだと、このニュースから感じました。

松江市総合体育館改修費36億円の内訳|設備投資の優先順位

座席増設だけではない、エンターテインメント施設への進化

では、36億4000万円という総事業費は、何に使われるのでしょうか。調べてみると、単なる「座席を増やす」だけの工事ではないことが分かりました。

主な改修内容

  • 観客席を約5000席に増設
  • リボンビジョンの新設
  • センタービジョンの更新
  • VIP向けスイートラウンジの新設
  • 一般ファンも利用できるカジュアルラウンジの整備

工事は2025年8月4日から2026年8月31日までの約1年間。2026年9月の供用開始を予定しているとのことです。

ビジョン3.5億円の理由|スポーツアリーナの映像設備投資

特に興味深かったのが、中国電力からの3億5000万円の寄付が「リボンビジョンの設置費とセンタービジョンの更新費」に充てられるという点です。

正直、「映像設備だけで3億5000万円?」と思いました。でも調べてみると、プロスポーツ会場の映像設備は単なる「スコアボード」ではないんですね。

リボンビジョンはアリーナを取り囲む帯状の大型LEDディスプレイで、センタービジョンは天井から吊り下げられた四面の大型スクリーン。

これらは試合中の演出、リプレイ表示、広告表示など、観戦体験を大きく左右する「エンターテインメント装置」なのです。

プロスポーツにおいて、観戦体験の質を高めることは、リピーターを増やすことや、法人顧客(VIP)の獲得に直結します。だから、これだけの投資をする価値があるということ。

座席数を増やす(量)だけでなく、観戦の質を上げる。この両面への投資が、現代のスポーツアリーナには求められているのだと理解しました。

17社から33億円を集めた方法|企業版ふるさと納税の仕組み

資金調達の全体像|バンダイナムコ30億円、中国電力3.5億円

さて、ここからが最も興味深いポイントです。36億円という巨額の資金を、どうやって調達したのか。

11月末時点で、17社から計33億6000万円が集まっているとのこと。その内訳を見ると:

  • バンダイナムコグループ4社:30億円
  • 中国電力:3億5000万円
  • その他13社:約3億6000万円

バンダイナムコグループは島根スサノオマジックの親会社(2019年に経営権を取得)なので、大口の投資は理解できます。でも、他の企業からもこれだけの額が集まっているのは、なぜでしょうか。

企業版ふるさと納税とは?スポーツ施設への寄付で9割税額控除

その鍵となるのが「企業版ふるさと納税」という制度です。

これは簡単に言うと、企業が自治体の地方創生プロジェクトに寄付をすると、法人税などから最大9割が控除されるという仕組みです。

例えば、企業が1億円寄付した場合:

  • 税額控除:約9000万円
  • 実質的な負担:約1000万円

つまり、実質1割の負担で地域貢献ができるわけです。企業にとっては「社会貢献活動」と「税務メリット」の両方が得られる制度なんですね。

バンダイナムコの30億円も、この企業版ふるさと納税を活用した2年間の累計総額とのこと。先ほどの計算でいくと、実質負担は約3億円ということになります(それでも大きな額ですが)。

親会社と地元企業が協力する理由|スポーツビジネスの資金調達モデル

この資金調達の構造を整理すると、こんな図式が見えてきます。

親会社(バンダイナムコ)の視点

  • 自社が経営するチームのホームアリーナへの投資
  • アリーナの価値が上がれば、チームの資産価値も向上
  • 企業版ふるさと納税で実質負担は軽減

地元企業(中国電力など)の視点

  • 地域活性化への貢献
  • 企業イメージの向上
  • 同じく税務メリット

自治体(松江市)の視点

  • 公共施設の改修資金を確保
  • 企業と地域をつなぐコーディネーター役
  • スポーツを通じた地域振興

この三者がそれぞれにメリットを得られる構造。Win-Win-Winの関係と言えるかもしれません。

興味深いのは、松江市が7月に中国電力に協力を呼びかけ、11月に寄付が実現したという動き方です。自治体が積極的に企業に働きかけ、資金を集めていく。

このプロジェクトマネジメントの手法自体が、他の地域でも参考になりそうです。

島根の事例から読み解く、プロスポーツの設備投資トレンド

リーグの基準引き上げが意味するもの

この島根スサノオマジックの事例から、プロスポーツビジネスの大きな流れが見えてきます。

一つ目は、リーグの基準引き上げです。

Bプレミアが5000席以上のアリーナを求めているのは、リーグ全体の価値を高めるため。観客が入らないガラガラのアリーナでは、スポンサーも集まらないし、放映権の価値も上がりません。

これは言い換えれば、プロスポーツの「参入障壁」が上がっているということ。競技力だけでなく、施設への投資能力も問われる時代になっている。

厳しい言い方をすれば、お金を稼げないチームは最上位リーグに残れない、という構造です。

資金調達の多様化|親会社依存からの脱却

二つ目は、資金調達の多様化です。

今回の事例では、親会社が30億円と大部分を負担していますが、それだけではありません。地元企業からも3億円以上が集まっている。企業版ふるさと納税という制度を活用し、複数の企業から資金を集めるモデルが機能しています。

親会社だけに依存しない資金調達。これは、プロスポーツチームの経営を安定させる上で重要なポイントかもしれません。

もちろん、すべてのチームがこの方法を使えるわけではないでしょう。島根スサノオマジックには「親会社が大手エンターテインメント企業」「地元に協力的な大企業(中国電力)がある」という条件が揃っていました。

でも、この事例が一つのモデルケースとして、他のチーム・他の地域でも応用できる可能性はあると思います。

自治体の新しい役割|スポーツ施設オーナーとしての戦略

三つ目は、自治体の役割です。

松江市総合体育館は市が所有する公共施設です。つまり今回の改修は、自治体主導のプロジェクト。

自治体が「所有者」として改修費用を負担し、企業版ふるさと納税という制度を使って資金を集め、企業と地域をつなぐコーディネーターの役割を果たしている。

これは従来の「チームが自前でアリーナを建設・改修する」モデルとは異なるアプローチです。

公共施設を活用し、自治体が主導し、複数の企業が協力する。このスキームは、他の地域のスポーツ振興にも示唆を与えるかもしれません。

ただし、いくつかの問いも残ります。

  • この36億円の投資は、将来的に回収できるのか?(事業性の視点)
  • 他のチーム・他の地域でも同じ方法が使えるのか?(再現性の問題)
  • 地域にとってのリターンは何か?(社会的価値の測定)

これらの答えは、数年後に見えてくるのでしょう。

2026年9月完成予定|36億円改修が示すスポーツビジネスの未来

改修工事は2025年8月4日から始まり、2026年8月31日まで続きます。工事期間中の2025-26シーズン、島根スサノオマジックは出雲市のカミアリーナ(島根県立浜山体育館)で試合を行う予定です。

そして2026年9月、新しい松江市総合体育館が完成。Bプレミア開幕を新アリーナで迎えることになります。

この事例を見ていて感じるのは、プロスポーツが「競技だけでは成立しない」時代に入っているということです。

いチームを作る。それだけでは足りない。 観客に快適な環境を提供する。 法人顧客を獲得できる施設を用意する。 映像設備でエンターテインメント性を高める。

「ハコモノ」への投資が必要な理由は、そこにあるのでしょう。

このような大規模投資が、今後のプロスポーツのスタンダードになるのか?

地域、企業、チームの三者がWin-Winになる仕組みは、他の地域でも機能するのか?

島根の事例は、日本のスポーツビジネスの一つの転換点を示しているのかもしれません。

参考

B1リーグ本拠地の体育館改修に電力会社が3億5000万円を寄付…原発立地の市が呼びかけ、総事業費36億4000万円(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
 松江市は、市総合体育館(学園南)の大規模改修工事に対し、中国電力から3億5000万円の寄付を受けたと明らかにした。
寄附のお願い(松江市総合体育館改修)|松江市ホームページ
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