WNBAは今、視聴者数・観客動員・スポンサー契約のすべてが右肩上がりで急成長中。
2026年からは約3,400億円規模の放映権契約も始まります。
しかしその一方で、選手の給料はほとんど上がっていないのが現状です。
なぜ稼いでいるのに報酬が増えないのか?
その理由は「ハードキャップ」と呼ばれる制度にあります。
本記事では、WNBAの成長と選手の報酬のギャップをわかりやすく解説します。
急成長するWNBA:視聴率・観客動員・放映権の数字から見る躍進

ここ数年でWNBAは注目度・人気ともに急上昇。
2024年シーズンのテレビ中継の平均視聴者数は120万人超え、前年から170%増という驚異的な伸びを記録しました。
会場への来場者も増え、1試合平均9,800人と前年比48%アップ。
さらに、2026年からは総額約22億ドル(約3,400億円)の放映権契約がスタート予定。
スポンサー数も急増しており、ビジネス面でも確実に拡大しています。
それでもなぜ選手の給料は上がらないのか?

こうした成長とは裏腹に、選手の年俸はほとんど変わっていません。
その理由は、WNBAには「リーグが稼いでも、選手報酬に反映されにくい構造」があるからです。
「こんなに頑張ってるのに、正当に評価されてる?」という声が選手たちから上がりはじめています。
選手たちが声を上げたCBA交渉とは?
選手たちは、この報酬制度の見直しを求めて、団体交渉(CBA)の場でリーグ側と向き合い始めました。
CBAとは、選手の働く条件や報酬などを話し合う、プロスポーツの“労働契約”のようなものです。
【用語解説】CBAとは?選手が交渉する「契約のルールブック」
CBA(Collective Bargaining Agreement)とは、リーグと選手会が結ぶ“働く条件のルールブック”のこと。
給料・勤務時間・ケガの保障など、選手たちの「働き方と報酬」に関わる約束事を取り決めます。
スポーツの世界でも、労働契約の考え方は重要な柱になっています。
オールスター裏での初交渉は“進展ゼロ”
2025年7月のオールスターイベント期間中、WNBAと選手会(WNBPA)が初の対面交渉を実施。
しかし、選手側からは「最初の45分が自己紹介で終わった」「実質的な議論なし」といった不満の声が。
ブレアナ・スチュワートやナターシャ・クラウドなど中心選手も公に批判を口にするなど、交渉は進展ゼロで終わりました。
求められているのは「昇給」ではなく「正当な評価」
選手たちが求めているのは、単なる昇給ではありません。
WNBAがこれだけ収益を伸ばしているにもかかわらず、それが給料に反映されないという“構造”への不満です。
NBAには収益分配制度(レベニューシェア)があり、稼いだ分だけ選手に還元される仕組みが整っています。
一方WNBAでは、形式上は最大50%の分配が可能でも、実際の取り分は25%前後にとどまっています。
【焦点】ハードキャップとは何か?報酬が増えない仕組みの正体
選手の報酬が増えない理由の一つが「ハードキャップ」と呼ばれる制度。
これは、チームが選手に支払える年俸総額に上限を設けるルールです。
2025年現在、その上限は約150万ドル(約2億3,600万円)。この枠を超える報酬は原則NGです。
リーグはなぜハードキャップを守ろうとするのか?
WNBAはまだ赤字運営が続いており、リーグ側は「財政の安定を優先したい」という立場。
ハードキャップは「支出にブレーキをかける役割」があり、経営を守るために必要な仕組みとされています。
一方で選手側から見れば、「いくら稼いでも給料が上がらない」制度ともいえ、意見の溝は深いままです。
選手とリーグの平行線…今後の交渉はどうなる?
現行契約の期限が2025年10月に迫る中、次の交渉日程は未定。交渉形式も決まっていません。
選手は「収益に応じた報酬を」と求め、リーグは「持続可能な経営が優先」と主張。
それぞれに理があり、一筋縄ではいかない交渉が続きます。
このCBA交渉は、WNBAが今後どんなビジネスモデルを目指すのかにも関わる大きな節目です。
まとめ:WNBAの未来を左右する報酬制度のアップデート
- WNBAは成長中だが、選手の報酬には反映されにくい
- 選手たちは「評価される仕組み」を求めて声を上げている
- リーグ側はハードキャップ制を維持し、経営の安定を優先している
- 今後の交渉のゆくえがWNBAの未来を左右する可能性がある
この交渉は、単なる昇給交渉ではありません。
スポーツビジネスにおける“価値の分配のあり方”を問う重要な局面です。
選手とリーグがどう折り合いをつけていくのか、引き続き注目していきましょう。
▼参考
WNBA Stars Say Zero Progress Made at CBA Meeting Natasha Cloud and Breanna Stewart both characterized the unio frontofficesports.com